YOGA

「チャレンジド・ヨガ」~視覚障がい者のためのヨガクラス~2016.8.6開催(立川会場) 2016.08.06

2016.08.07

2016年8月6日。
青い空、白い雲。
降り注ぐ強い夏の日差しの中、ここ泉体育館でも気温はぐんぐん上昇中。
溢れる陽光を浴びて輝く時計台の下を進み、チャレンジド・ヨガに参加する者さんが続々と会場へと入っていきます。

今回は、昨年6月の初開催以来、クラスのインストラクターを務めてきたAki先生の最後のクラス。
来月からインストラクターを担当するmiwa先生と2人で、今日のクラスを担当します。
それではクラスの様子を見ていきましょう。


まず最初はAki先生から。
いつものように「あいさつ」から始めます。
マットの中央で、安楽座の姿勢で座りましょう。
お尻の肉を身体の外側に掻き出して、坐骨がマットに触れるのを感じます。
腰に手を当て、骨盤が後ろに倒れているようなら真っ直ぐ立てて、坐骨の先端がマットに当たるように身体を起こしていきます。

骨盤の次は背骨。
丸まった背中を真っ直ぐに伸ばします。
頭のてっぺんを天井に向かって引き上げていくと、背中が伸びて胸が開いていきます。
あごを軽く引いて、視線は正面。
両手は、手のひらを上にしてひざの上に置きます。
肩甲骨を少し下げるようにすると、肩の力が抜けていきます。

一度口からハーッと吐いて。
目を閉じて、出来る方は鼻から呼吸します。
息苦しく感じるようなら口から呼吸しても構いません。
まずは、自分の自然なリズムで呼吸します。

Aki先生の最後のクラスのテーマは、「日日是好日(にちにちこれこうにち)〜今ここにあることを呼吸で感じる〜」
日日是好日とは、こだわりやとらわれをさっぱりと捨て切って、その日一日をただありのままに生きる、清々しい境地のことを言います。
自分の心の内なる声に耳を傾け、心の声の指し示すままに、「今」の自分に出来ることを精一杯行っていったなら、たとえそれがどんな日であっても、あとに残るのはやり切った清々しさだけ。
そんなふうに、「今」を一生懸命に生きること。
そのためには、過去や未来を思い煩うのではなく、「今」に意識を向ける必要があります。

呼吸に意識を向けてみましょう。
それは、自分の「今」に意識を向けること。

人は何をしていても47%の割合で他のことを考えている、という研究結果があるそうです。
しかも、目の前のことに集中しているときより、他のことを考えているときの方が、幸福度が大きく下がる傾向がある、ということもわかってきています。
どうやら私たちは、注意力が散漫になっているとき、過去の出来事を悔んだり、これからの出来事について心配したり、といったものに意識が飛んでしまうことが多いようです。

考えても仕方のないようなことから、「今」に意識を引き戻すための方法。
その一つが「呼吸に意識を向けること」なのです。

大きく吸って、大きく吐いて。
身体の中の呼吸の流れを感じていきます。
吸う息とともに膨らんで伸びていく身体。
吐く息とともに弛んでいく身体。
少しずつ、ゆったりとした呼吸に身を任せながら、今の自分の身体を見つめていきます。

大きく息を吸い込んだら、口からハーッと全部吐いて、胸の前で合掌。
本日のクラスを始めます。


最初のポーズは「バナナアーサナ」
大きく伸ばした身体を横に曲げて、バナナのかたちを作るというド直球なネーミング。
背中と両脚の後ろ側を流れる膀胱経と、身体の前面と両脚の内側を流れる肝経、身体の側面と足の外側を流れる胆経を刺激します。
この季節は、暑さと湿気に加えて、エアコンによる冷えなど、身体に影響を及ぼす要素が複雑に重なり合って、1年の中でも養生が難しい時期のひとつです。
身体の各部を満遍なく刺激して、気の流れを整え、これからの夏の暑さを乗り切っていきましょう。
ここからポーズの説明です。
1. 仰向けの姿勢になります。
2. 左足のかかとをマット左下の角に近づけます。
右脚は左脚に寄り添うように揃えます。
3. 両手を頭の上に上げて、仰向けでバンザイ。
4. 左の足首の上に右の足首を乗せて、右脚の外側を伸ばします。
5. 左手で右の手首を掴んで左方向に引っ張り、身体の右側面を伸ばします。
身体の右側でバナナのようなカーブを作ります。
6. 眼を閉じて、ゆっくり大きく呼吸します。
吸う呼吸で身体を長~く伸ばして、吐く呼吸のときに、左手が掴んでいる右の手首を軽く左に引っ張ります。
身体の右側面が伸びていくのが感じられたら、さらに身体を右方向に押し出すようにして伸ばします。
呼吸を意識して。
もし呼吸が止まっていたら、それは力み過ぎ。
一度思い切って気持ちよく伸ばしたら、楽に呼吸が出来るところまで弛めましょう。
バナナというのは、どの房も最初は下向きに伸びているのですが、そこから太陽の光を求めて自然に反り返っていくのだそうです。
自分の一番気持ちいい姿勢で、気持ちよく陽の光を浴びようとした結果があのかたちなのですね。
そんなバナナをイメージして、ゆる~く気持ちよく体側を伸ばしていきましょう。
7. 一度は~っと吐き切って、ゆっくりと息を吸いながら腕と脚を中央に戻します。
一度腕も降ろして身体の横に戻します。
8. 左右を入れ替えて行います。
ポーズの説明はここまでです。
眠っているかのようなリラックスした表情。
皆さん、気持ちよく身体を伸ばしています。
一度ふーっと吐いて、両腕、両脚を中央に戻します。
伸ばしたところがじんわりと弛んでいくのを感じましょう。


ゆったりと身体を伸ばしてリラックスしたところで、miwa先生にバトンタッチ。
まずは、仰向けの姿勢から身体を起こしていきましょう。
ひざを曲げて、右側にごろんと寝返りを打ちます。
右腕を下にして横向き寝の姿勢になったら、左手で身体を支えてゆっくりゆっくり起き上がります。
頭を下げた状態で身体を起こし、最後に頭を上げて起き上がります。

胡坐の姿勢で座り、ゆっくりのんびり呼吸して、心と身体をリラックスさせましょう。
miwa先生のパートのテーマは「身体の重みを感じてみよう!〜身体の力を抜くこと」
スマホやパソコンが手放せない現代社会。
一日の大部分で不自然な姿勢を強いられ、身体は絶えず緊張状態に置かれています。

知らず知らずのうちにカチカチに固まってしまった身体をほぐすための第一歩は「身体の力を抜くこと」。
当たり前のようで、これがなかなか難しい。
絶えず緊張状態に置かれている身体は、力の抜き方を忘れてしまっているからです。
力が抜けていないことにすら気づかないくらい、弛むことが出来なくなってしまった自分の身体。
そんな石のようなになってしまった身体を、miwa先生と一緒にほぐしていきましょう。

最初のポーズは「バタフライ」
合蹠(がっせき)の脚のかたちが蝶の羽のように見えることから名付けられたこのポーズは、股関節の柔軟性を高め、背中まわりの緊張を弛めます。
ここからポーズの説明です。途中で何度か写真が挟まりますが、そのまま聞き流してください。
1. 胡坐の姿勢で座ります。
「あいさつ」の時と同じように、坐骨を意識して座りましょう。
胡坐で座りづらい方は、お尻の下にクッションを敷くなどして、お尻の位置がかかとより高くなるようにすると、座りやすくなります。

2. 足先を前に出して、足の裏同士を合わせます。
この、足の裏同士を合わせることを「合蹠(がっせき)」と言います。
身体の前で合蹠すると、両脚がひし形のかたちになります。
楽に座れる範囲で、かかとを少し身体から遠ざけて、大きなひし形を作りましょう。
両手は楽な位置に置いておきます。

3. 左右の坐骨に均等に体重が乗るように、姿勢を調整します。
お尻の肉をかき分けて、坐骨の先端でマットを感じます。
そして呼吸。
肩の力を抜いて、リラックスした深い呼吸を繰り返します。
身体の中を巡る空気の流れを感じ、身体の中の微細な動きを感じていきます。
坐骨が重たくなってマットに沈み込み、背骨はすーっと軽くなって、天井に向かって真っ直ぐ伸びていく、そんな感覚が感じられるでしょうか。

4. 左右どちらかの手を腰に当ててみましょう。
指先を下に向け、お尻の割れ目の始まるあたりに指先が来るように手を当てると、そこには大きな板状の骨があるはずです。
これが仙骨。
仙骨とマットの角度を見てみましょう。
だいたいマットと垂直になっている方。
良い姿勢です。
少し後ろに傾いているかな~、という方。
骨盤が後傾している、という言い方をしますが、少し骨盤が後ろに傾く癖があるかもしれません。

それでは、これからこの仙骨を前に倒していきます。
おへそから指3本分くらい上のところ、いわゆる「みぞおち」のところを身体の中に引き入れるようにして、背中を少し丸めます。
胸から上が軽く前に倒れてくるので、その重みを使って仙骨を前に倒していきます。
首の力を抜いて、首の後ろを伸ばすと、頭の重みが上半身を前に引っ張ります。
肩の力を抜いて、両手を左右のすねの前に出してみましょう。
腕の重みが加わって、さらに身体を前へと引っ張ります。


力まずに、身体の重みだけを使って、自然に身体が前に倒れていくのに任せます。
意識するのは、とにかく身体の力を抜くこと。
それと、楽に呼吸をすること。
ちょっと苦しいなと感じたら、少し身体を起こして、楽に呼吸が出来るところまで戻りましょう。
まだまだ余裕があるなという方は、もう一歩二歩、両手を前に歩かせてみましょう。

目を閉じて、のんびりと呼吸をしながら、自分の身体の中で起こっていることを見ていきます。
吸う息とともに身体が膨らみ、肩甲骨の間を押し広げていく感覚。
息を吐いて抜けていく空気とともに、身体が下に沈み込んでいく感覚。
緩やかに湾曲する背骨のアーチを伝わって、呼吸が行ったり来たりする感覚。
肩の力が抜けて、背中の肉が、余計な力みとともに、お尻の方に、坐骨の方に向かって流れていくような感覚。

仰向けに寝転がるのと比べて、決して楽な姿勢というわけでもないのに、しばらくすると眠気さえ催してくるような、不思議なリラックス感覚。
これが「陰ヨガ」の特徴です。
ゆったりした呼吸とともに、力を抜いてじわじわと身体を弛め、じっくり時間を掛けて、関節や筋膜など、身体の奥深くにアプローチしていきます。
陰ヨガの「陰」というのは、古代中国の陰陽思想から採られているもの。
エネルギーを発散していく「陽」の気に対して、身体の中にエネルギーを満たしていく「陰」の性質を持っていることを表しています。
身体がほぐれていくにしたがって心の緊張もほぐれて、心身共に回復していきます。


5. 今度は、身体の前に付いた手をトコトコと左に歩かせてみましょう。
右の坐骨がマットから浮かない程度に身体を左にひねって、そのままの姿勢で静止します。
急ぐ必要はありません。
ゆっくりと時間を掛けて、少しずつ少しずつ動かしていきましょう。
 

伸びる部分や縮む部分、内臓の動き、呼吸の変化。

痛いところが出てきたり、息苦しくなってきたりしたら、そこで止まって少し戻ります。
自分の身体に起こる感覚の変化をじっくりと見つめながら、自分の気持ちいいポイントを見つけていきましょう。

しばらくポーズをキープしたら正面に戻ります。


6. 今度は両手を右に歩かせていきましょう。
左の坐骨がマットから浮かない程度に身体を右にひねって、そのままの姿勢で静止します。

ゆっくりと身体を右にねじりながら、自分の身体の左右の違いを感じます。
人の身体は左右非対称ですから、必ずやりやすい方とやりにくい方があります。
右の方が伸ばしやすい、とか、左ほど深くねじれない、とか。

自分の身体が左右でどんなふうに違っているのか、のんびりとした呼吸とともに見つめていきましょう。
身体の右側は、左に比べてどんな動きが得意で、どんな動きが苦手なのか。
どんな姿勢が得意で、どんな姿勢が苦手なのか。
じっくりと観察しながら、自分の身体を再発見していきましょう。

しばらくポーズをキープしたら、もう一度正面に戻ります。

7. 上半身を正面に戻して、もう一度肩と首の力を抜いていきます。
だらーっと脱力して、前屈。
自分の呼吸に集中して、ひと呼吸ごとに起こる身体の変化をひとつひとつ見つめていきます。
お腹や胸を出入りする空気、内臓の動き、背骨を伝って行き交う気の流れ。
解けていく身体が、背中を伝って降りていく感じ。
脱力した身体の重みが、一番下で身体を支える坐骨に掛かって、坐骨がマットに沈み込んでいく感覚。
ぼーっとしてきたり、眠くなってきたり。
ポーズによって引き起こされた反応のひとつひとつを拾い上げ、楽しみながら見つめていきましょう。

8. 背骨を下から起こしていって、最後に頭を上げて姿勢を戻します。
ポーズの説明はここまでです。

どうでしょう?
ポーズに入る前の身体と、ポーズから抜けた後の身体。
違いは感じられるでしょうか。
坐骨が重く沈んでいるような感覚はありますか?
それは、それだけ上半身の力みが抜けたという証拠です。
クセになってしまった身体の力みを取るのは簡単なことではありません。
繰り返し練習して、その日の体調による感じ方の違いなども、ひとつひとつ楽しみながら見つめていきましょう。
慌てず焦らずコツコツと。
いつか身体の方が変わっていきます。

脚を閉じて体育座りの姿勢になります。
ゆっくりゆっくり身体を後ろに倒して、立てひざのまま仰向けになります。
背中がマットに付いて、ほっと一息。
揺らがない大地に背中を付けてゆったりと身体を伸ばし、普段身体を支えている首、肩、背中をその任務から解放して、力みをほどいていきます。
次に、ひざを胸の方に引き寄せます。
肩をマットから離さずに、手が届く範囲で両手をひざの上に乗せて抱え込みます。


「クレイドル」と呼ばれる休息のポーズ。
ひざの上に置いた両手に掛かる腕の重みで、太ももをじんわり胸の方に近づけていきます。

身体の力が抜けてくると、錆びついたねじが少しずつ緩んでいくように、関節の可動域も少しずつ広がっていきます。
今はひざと胸との間に距離があっても、繰り返していくうちに、自然にひざと胸が近づいていきますよ。
 

ゆっくりと足を降ろして、仰向けでひざを立てた姿勢になったら、次のポーズに入りましょう。

次のポーズは「ツイストルーツ」
仰向けで身体をねじるポーズです。
ここからポーズの説明です。
1. 立てひざになった左脚の太ももの手前に右脚を重ねて交差させ、脚を組みます。
腕は楽なところに置いて、手のひらを上に向けます。
肩の力を抜いて、呼吸を楽に。

2. 上半身は仰向けのかたちのままで、息を吐きながら、組んだ脚全体を左側に倒します。
お腹から左にねじって、右ひざを身体から遠ざけるようにしてマットに近づけます。
余裕のある方は、右ひざをマットに付けてしまいましょう。
ねじりより楽な呼吸を優先して、息苦しくならない範囲で身体をねじります。
顔の向きは動かさず、天井に向けたままにしておきます。
右肩はマットから離れても構いませんが、右手は身体の右側に残して、右腕の重みが右肩に掛かるようにしておきます。

3. 眼を閉じて、呼吸を深めていきます。
ゆっくりと息を吸い込んで、伸ばしている部分に呼吸を流していきます。
吐いて空気が抜けていくのに合わせて、ねじりを深めます。
筋肉の力でねじるのではなく、力を抜いて身体を弛め、身体の重みでねじります。
深い呼吸を繰り返しながら、自分の身体を見つめます。
ゆったりのんびり呼吸しながら、身体の中で起こっていることを、ひとつひとつ感じていきます。
呼吸とともに身体が弛むと、右ひざや右肩は自然に下へと沈んでいきます。
肩の力を抜いて、胸を開いて、大きく楽に呼吸していきましょう。

4. 息を吸いながら、ゆっくりゆっくり脚を元の中央の位置に戻していきます。
組んだ脚もほどいて、立てひざのかたちに戻したら、ひざを胸に近づけて「クレイドルポーズ」で休息します。

6. 足を降ろして、左右を入れ替えて同様に行います。
ポーズの説明はここまでです。

サポーターさんとの練習タイム。
先ほどと左右を入れ替えてポーズを取ります。
ポーズが飲み込めてくると、気持ちよくリラックスした表情が浮かんできます。

の~んびりと過ぎていくひととき。
眠くなってきちゃった、なんて方も(笑)。



最後にもう一度、みんな揃ってポーズを取ります。
それぞれの身体の状態なりに、力の抜けたポーズに仕上がりました。


 


クレイドルポーズに移って身体を休めます。
全身の力を抜いて、自分の身体の重みを感じましょう。

腰、肩、背中。
マットに触れている部分が、身体の重みを受けてマットに沈み込んでいく、そんなところをイメージしてみましょう。
 


右側にごろんと寝返りを打って、横向き根の姿勢になります。
背中を丸め、脚を畳んで胸に近づけ、身体を小さく丸めていきます。
静かに身体を落ち着かせたら、左手で身体を支えてゆっくりゆっくり起き上がっていきます。
首をうなだれて、身体の下の方から起こしていって、最後に頭を上げていきます。


胡坐の姿勢で座ったところで、miwa先生のパートは終了です。
力を抜いて、身体の重みを感じることが出来たでしょうか。
眠くなっちゃった方、寝ちゃった方。
いいんですよ。
それは、身体がそれを求めていたから。
心が弛んで、今の自分に本当に必要なものが引き出されてきたんですね。

大事なのは陰陽のバランスを取っていくこと、とmiwa先生は言います。
人を活動へと向かわせる「陽」と、休息へと向かわせる「陰」。
日常生活の中で、時にこのバランスが崩れることがあります。
忙しすぎて疲弊してしまったり、心がたるんで何もする気になれなかったり。
そんな時、ちょっとヨガの世界に立ち寄ってみましょう。
姿勢を整え、呼吸を整え、時間があれば、心と身体の求めるままに、ポーズを選んでみましょう。
いつしか陰陽のバランスが整えられ、本来の自分へと立ち戻っていきます。
miwa先生をインストラクターに迎えて、新しく生まれ変わる立川クラス。
ご期待ください!

さて、ここからは再びAki先生のパート。
卒業のクラスの最後を飾るのは「椅子のポーズ」
夏らしく、元気の出るポーズで締めくくります。
足裏全体でしっかりマットを捉えること、脚の内側の気の巡りを感じること、背中の緊張を抜くこと、これらをポイントに行っていきましょう。
ここからポーズの説明です。
1. マットの前の方に立ちます。
両足の間は腰幅程度に開いて、足先は真っ直ぐ正面に向けます。
足の親指同士が平行になるように向きを揃えます。
足先が「ハ」の字に開いてしまうと、ひざを曲げたときにひざが身体の内側に倒れてきて、ひざを痛める可能性があります。
一度肩をぐるっと回して力みを取ったら、両手を腰に添えます。
銭湯で風呂上がりにコーヒー牛乳を飲むときの、あの感じです。

2. 呼吸を整えます。
吸ってお腹を膨らませ、吐いてお腹を凹ませて。
深く、大きく、ゆっくりと。
足の裏側、足の親指の腹に意識を向けてみましょう。
吸う息で、足の親指から太ももの付け根まで、脚の内側を昇ってくる気を感じます。
吐く息で、太ももの付け根から脚の外側を通って、足の小指の方へと降りていく気を感じます。
吸う息と、吐く息と。
足の裏側を起点に、呼吸に合わせてぐるぐると巡っていく気の流れを感じます。

3. 一度ふーっと息を吐いて、あごを軽く引き、首の後ろを伸ばします。
あごを引いてうつむき加減になっていませんか?
身体を起こし、背中を伸ばして、視線は正面です。

4. 息を吸って、両腕を伸ばして前へ振り出し、そのまま天井へと回し上げます。
手のひらは向かい合わせにして、指先までしっかり伸ばします。
吸う息とともに、足の裏側から手の先まで、ぐーっと気が昇っていくのを感じます。
吐く息とともに、手の先から足裏に向かって、すーっと降りていく気を感じます。

5. 大きく吸って、ゆっくり息を吐きながら、少し離れたところにある椅子の座面の端に、ちょこんとお尻を乗せるような感じで、お尻を下に降ろしていきます。
足の先がマットから浮き上がりやすいので注意して、足裏をしっかりマットに付けておきましょう。
このポーズのポイントは、ひざの先が足先よりも前に出ないようにすること。
吸う呼吸で、足裏から脚の内側を昇っていく気の流れを感じ、吐く呼吸で脚の外側を足裏に向かって降りていく気の流れを意識します。
そして、背中や腰の後ろを広―く長ーく伸ばしていきます。
腕を上に伸ばしているのがつらい場合は、前へ倣えの要領で前に伸ばしても構いません。
バランスを取るのが難しいようなら、背中を壁に付けて行ってみましょう。
大きく吸って、大きく吐いて。
口角上げて、にこやかに。

6. 一度大きく吐いて、息を吸いながらひざを伸ばしていきます。

7. 腕を降ろして、大きくゆったりと呼吸します。
自分の呼吸を見つめ、心と身体を落ち着かせるように、深い呼吸を繰り返します。
ポーズの説明はここまでです。
ここからは、サポーターさんとの練習時間。
Aki先生も会場内を回ってポーズを伝えます。


そして本日の完成ポーズ。
両隣の人と手を繋いで、全員で輪を作ります。
譲り合いながら適度に距離を取って立ち、両足の間を腰幅程度に開いて、足先を並行に揃えます。
一度ふーっと大きく息を吐いて、身体の力みを取っていきましょう。
力を抜いて、リラックス。
身体の重みを足裏に感じ、吸う息とともに脚の内側を昇ってくる気の流れ、吐く息とともに脚の外側を降りていく気の流れを感じます。

息を吸って、全員で両手を天井に向かって上げていきます。
身体の前側を気持ちよく伸ばして、背中の緊張もほどいていきます。
次の吸う呼吸で上に伸びて、吐きながらゆっくりとお尻を降ろしていきます。
自分の後方、少し離れたところにある椅子の座面の端に、軽くお尻を乗せるようなイメージ。
隣の人とタイミングを合わせて、そっと腰を下ろしていきます。


腰を落とすときに背中が丸まらないように、意識して胸を開いて、深く大きく呼吸しましょう。
マットを捉える足裏に、次第に力がこもっていくのを感じます。
ぐっと踏ん張っても息を止めずに、呼吸を続けます。
そして笑顔。
口角を上げてにこやかに。

「それでは、一度は~っと吐き切って、ゆっくりと・・・・」
思わず漂う安堵の雰囲気。
「両手を前に出していきましょう!」
「え?」
ざわつきながらも、両腕を前に伸ばしてもうひと踏ん張り。


そして、上げた口角の先がピクつきはじめた頃。
「それでは、一度は~っと吐き切って・・・・」
安堵と警戒の入り交じった微妙な空気(笑)。
「ゆっくりと、ひざを伸ばしていきましょう。」
今度こそ「は~っ」という安堵のため息。
両隣の人に笑顔で感謝の合掌をして、それぞれ自分のマットに戻ります。


ここから先は休息の時間。
マットの上に仰向けに横たわります。
行うのは「ボディスキャン」
何も考えず、ただ呼吸を繰り返していきましょう。

吸って、吐いて。
息を吸うと、肺の中に空気が貯まって、身体が膨らんでいきます。
息を吐くと、空気がすべて抜けて、身体がしぼんでいきます。

息を吸うと、取り込んだ酸素が身体中に行き渡ります。
息を吐くと、身体の中の要らないものと一緒に、全身の力が抜けていきます。

自分のペースでゆっくりと呼吸を続けましょう。
いろんなことが頭に思い浮かんでも、ひとつひとつ考えたりせずに流していきましょう。
「雑念が浮かんできてしまう」と、とらわれることもありません。
何も気にせず、ただただ為すがままに任せて、自分の呼吸を続けていきます。


ボディスキャンを始める前に、リラックスした姿勢を取りましょう。
クラスの最後に必ず行う「屍のポーズ」
両脚は軽く開いて伸ばし、足先はハの字に開きます。
両腕は身体の横にゆったりと伸ばして、脇の下には少し隙間を空けます。
両手のひらは上向きにして軽く開きます。
頭の位置を左右に動かして、力みが抜けたら正面に向けます。
肩は耳から離すように、肩甲骨をぐっと下げて、力を抜きます。
全身の力を抜いて、身体の欲するままに呼吸します。


それでは、ボディスキャンを始めます。
今から指示する場所に、自分の意識を向けてください。

右足の親指に心の目を向けます。
次いで、右足の人差し指、中指、薬指、小指。
つま先、土踏まず、かかと、足の甲。
右の足首全体に意識を向けます。
ふくらはぎ、むこうずね。
ひざ裏、ひざ頭。
太ももとその付け根。

今度は左。
左足の親指から始めて、右足の時と同じように、ひとつひとつの部位に意識を向けていきます。
自分の下半身に意識を向けたら、そこからさらに上に上がっていきます。

骨盤全体。
骨盤の奥の方。
おへそ、みぞおち。
右の胸、左の胸。
右の肩甲骨、左の肩甲骨。
右腕の二の腕、ひじから手首にかけて、手の甲、手のひら。
右手の親指、人差し指、中指、薬指、小指。

左肩に感覚を移して、二の腕から指先まで、順々に辿っていきます。
左右の手のひらはふんわりと開いて。
さらに上に上がって、のど、あご、くちびる。
舌の先から舌の付け根。
上あご、鼻。
右のほっぺ、左のほっぺ。
右のまぶた、左のまぶた。
おでこ、頭頂、右耳、左耳。
頭全体。
身体の内側。

隅々まで流れていく血液と、静かに行き来する空気の流れ。
今はただ、気持ちの良い呼吸を続けていきましょう。

全身すべて。
気持ちの良い呼吸が身体を浄化していきます。
落ち着いた呼吸が波立つ心を鎮めていきます。

明鏡止水。
静止した水面は、鏡のように周囲の景色を映し出します。
何物にもとらわれない穏やかな心は、本来の自分の姿をあるがままに浮かび上がらせます。
すべての人の心の奥底には、良きもの、善なるものを求める心が宿っています。
しかしながら、それはしばしばこだわりやとらわれに覆い隠され、自分でも気づけないほどの奥底に押し込められてしまっています。
良くないことだけど、みんなやっているからいいか。
やらなきゃいけないことだけど、みんなやってないからいいか。
そんなところから、心の声は奥へ奥へと追いやられていきます。
その結果、何となく感じるうしろめたさを引きずりながら、日々を過ごしています。
ありのままに生きるとは、心の奥に宿る声に正直に生きること。
心の声が求めるものに「よし、やってみよう」と応じていく。
そのとき感じる清々しさ。
どんなひどい嵐の日であっても、その日はきっと「好日」、良き日と感じられるでしょう。
「日日是好日」。
ありのままに生きるための心の扉を開ける鍵。
それが「呼吸」。
それが、Aki先生からの最後のメッセージ。


控えめに鳴らされた鐘の音は、目覚めの準備を始める合図。
両手、両足の指先を少しずつ動かします。
ひざを立てて、身体を軽く左右に揺すります。
だんだん振れ幅を大きくしていって、身体の右側を下にして横向き寝の姿勢になります。
左手で身体を支えてゆっくりと起き上がり、安楽座の姿勢で座りましょう。
 




手のひらと手のひらを優しく重ね合わせて、胸の前で合掌。
感謝の意を表す「アンジャリムドラ」の印を結んで、自分に、周囲に、感謝の想いを運びます。

 


続いて、「ロータスムドラ」の印を結びます。
ロータスというのは蓮のこと。つぼみの状態から開花しようとする蓮の花を象ったムドラ(印契)です。

まず、合掌した手を一度離して、左右の手を「パー」のかたちにします。
それから、「パー」にした左右の手のひらを重ね合わせます。
指先と手のひらの一番下の縁(いわゆる「掌底」の部分)を合わせて、真ん中には隙間を開けておきましょう。
そこには「愛」があると言われています。
手のひらの下の部分と、親指、小指の先をくっつけたまま、真ん中の3本の指を離して、ゆっくりと左右に開いていきます。
朝の光を浴びて、つぼみの状態からゆっくりと開花していく蓮の花をイメージしてみましょう。
泥中に生まれて泥に染まらず、水上に出でて汚れなき大輪の花を咲かせる蓮は、ヨガの世界観を象徴しています。
しかもこの蓮という植物は、泥が汚れていればいるほど、大きな花を咲かせるのです。

良いことばかりではない、思い通りにはならないこの世界で、蓮の花の如く本来の自分を失わずに、伸び伸びと、生き生きと生きていく。
決して簡単なことではないけれど、皆さんにはひとつの道標があります。
道に迷ったときに、本来の自分に立ち戻る方法。
それが「呼吸」です。

アンジャリムドラの印に戻して最後のあいさつ。
参加者の皆さんから、サポーターの皆さんから、惜しみない拍手が送られます。
言葉にしなくても、鳴り止まない拍手が全員の想いを物語ります。
Aki先生、お疲れさまでした。
そして、ありがとう。
 


次回のクラスからは、miwa先生がこのクラスを担当します。
Aki先生とはまた一味違う、miwa先生ならではのクラスで楽しませてくれることでしょう。
ご期待ください!


PROFILE
村上 智彦

村上 智彦

所属部署:業務部

温泉が好きすぎて、とうとう温泉ソムリエマスターになっちゃいました。
勢い余って、温泉入浴指導員、高齢書入浴アドバイザーの資格も取りました。
トレッキングは好き嫌いというより、歩かないと行けない温泉があるので必要に迫られてというか・・・(笑)。

オッシュマンズはチャレンジド・ヨガの活動を支援しています。
それは人と人との繋がりの賜物。
良いご縁に恵まれて、立ち上げのときからお手伝いさせて頂いております。

スポーツは万人のもの。
それはチャレンジド・ヨガの理念。
そしてオッシュマンズの目指すものでもあります。

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