【My Routine】Ellange 株式会社 | 番外編 #02 廃漁網から始まるストーリー

米国テキサス州ヒューストンに本部を持つOSHMAN’S SPORTING GOODS INC.と業務提携し、その関連会社として1984年12月に創業。翌1985年7月24日に、1号店を原宿駅前にオープン。
「アメリカ生まれのスポーツショップ」として、アメリカンスポーツを中心とした総合スポーツ用品の販売を基本とし、スポーツを核に音楽・ファッションなどの要素を取り込み、スポーツを通して人生を楽しむためのライフスタイルを提案するスポーツセレクトショップです。
現在では 「This Feels Good」を企業スローガンに
―アスリートやスポーツをする人だけの存在じゃない。
「体を動かすことが好き」な人のために
わたしたちはある。
体を動かせば、ココロが震える。
その瞬間を感じてほしい。
汗を流すよろこびを、もっともっと自由に。
みんなのものに。
そしてあたりまえのカルチャーに、
そのきっかけになるのが、オッシュマンズです。―
という想いを胸に、日々の業務にあたっています。
そんな我々オッシュマンズですが、社内には 「魅力」 と 「個性」、「エネルギー」 溢れるスタッフが沢山在籍しています。
“My Routine” は、そんな 「魅力」 と 「個性」、「エネルギー」 溢れるスタッフたちが、普段の生活の中で感じる “This Feels Good” な時をご紹介する企画です。
今回は、2023年6月に公開した 【My Routine】PATAGONIA REPAIR CENTER | 番外編 #01 WORN WEAR:新品よりもずっといい と同様、オッシュマンズの "社外" に目を向け、オッシュマンズと関係のある企業やそこで働く人々に焦点を当てた "番外編" の第二弾をお届けいたします。
この "My Routine" の企画・記事を通して “オッシュマンズ” のことを少しでも知って頂ければと思っています。
番外編 #02
名前(企業)・・・Ellange 株式会社
事業内容 ・・・NetPlusJapanProgramの運営
はじめに
これまで、オッシュマンズスタッフのライフスタイルや、企業スローガンでもある "This Feels Good" な時間をご紹介することで、私たちことをもっと知ってもらいたいと思い始めた本企画。私たち自身がスポーツを通して人生を楽しむことで、少しでもその素晴らしさが伝われば良いなという気持ちで連載を続けてきました。
今回は、"My Routine" 企画の番外編第二弾として〈patagonia(パタゴニア)〉日本支社のご協力のもと、廃棄予定の漁網を回収し、NetPlus®(ネットプラス)素材の製造事業を行う〈Ellange(エランゲ)株式会社〉の取り組みをご紹介します。
ネットプラスは、100%追跡可能な使用済み漁網のみで作られるリサイクルナイロンのこと。米国カリフォルニア州のBureo®社が、南米の漁業コミュニティから使用済みの漁網を回収し、様々な工程を経て生産している素材です。
〈patagonia(パタゴニア)〉はこのBureo®社との取り組みをサポートしており、ネットプラスを使った様々なリサイクル製品を世に送りだしています。オッシュマンズで年間1万枚以上売り上げる大定番「バギーズショーツ」も、ネットプラスを使った製品のひとつ。今回のボランティアワークは、そんな縁から実現しました。
日本の漁業と漁師が置かれた現状とは
桜も散り、ちょっと汗ばむほどの陽気となった4月中旬。弊社オッシュマンズスタッフの研修も兼ねて、長生郡白子町に拠点を置く〈Ellange(エランゲ)株式会社〉を訪問し、ボランティアワークを実施させていただきました。(代表の関幸太郎さんは、有害な海洋プラスチックごみとされる漁網が投棄される現状を変えるべく、「誰もが海を想う社会を作る」ことをミッションに掲げ、2021年に起業。2023年にはネットプラスを開発するBureo®社とパートナーシップを組み、日本におけるネットプラスの製造事業を取りまとめています)
今回、私たちが訪れた〈Ellange(エランゲ)株式会社〉は、廃棄される網を各地の船団から直接回収・買収し、100%漁網由来の高品質なリサイクル原料へと再生する事業を行っている会社です。
ボランティアワークの前に、まずは昨年から〈Ellange(エランゲ)株式会社〉に廃漁網の提供を行っている有限会社土屋水産の土屋直美代表や千葉県旋網漁業協同組合の相澤参事が、千葉県漁師の現状や課題、そして廃漁網について話してくれました。
(まき網漁業について詳しく話してくださった、千葉県旋網漁業協同組合の参事)
(千葉県の漁師さんの仕事や現状などについて話してくださった土屋直美さん。有限会社土屋水産 代表取締役。曽祖父が「清栄丸」を創業し、夫が現船長。)
6~7隻ほどの船団で、まとまって操業する「まき網漁業」は、帯状の網でサバやイワシなどの群れを囲い巻き上げて魚を獲る漁法。使われる網は2隻で行う場合、長さ約3,000m、深さ200mにもなるそうです。
当然、漁に使う漁網の購入費用は膨大なもので、時化などで漁にでられない時は、漁師さんたちは網倉庫で網の補修を行いながら大事に使うそう。それでも年間数千万円の費用がかかると言い、事業者にかかる負担は相当なものだと想像に難くありません。それでもダメになってしまった網は廃棄されますが、それだけの網を処分するには産廃業者に引き取ってもらわねばならず、そこでもまた多くの費用がかかってしまうと話してくれました。
(漁網を回収する際に使うトラック。実際の漁でも使われている「パワーブロック」という機械で網を巻き上げて、効率よく回収しているそうです)
漁網は関さんたちが各地の漁港にトラックで行き、直接回収しているそう。各船団に足繁く通いながら関係性を構築し、丁寧に説明して回収していると話してくれました。漁師さんに手間を取らせず、手際よく回収作業を行うため、網を巻き上げるパワーブロックという機械を使って直接トラックに積み込んでいるそうです。
「これまでは少ないお金をかけて廃棄していた漁網を、買い取ってくれるだけでも漁師としてはありがたいこと。それに自分たちが使った漁網が形を変えて〈patagonia(パタゴニア)〉さんのような素敵なブランドさんの製品になり、多くの人に再利用してもらえる。漁師のやりがいにも繋がり、誇りにも繋がると考えています。若い人たちが漁業の仕事や漁網について知ってもらえるきっかけにもなってくれることを期待しています」と、土屋さんは言います。
世界の海ではそのまま海中に廃棄されることもまだ多く、環境汚染の一因にもなっています。廃漁網を回収し、リサイクル素材へと生まれ変わらせる〈Ellange(エランゲ)株式会社〉の取り組みは漁師さんにとっても、海の環境にとっても、素材を必要とするメーカーにとっても皆にメリットがあり、良い循環を生み出すことが分かりました。
漁網がネットプラスに生まれ変わるまで
ボランティアワークの前に、関さんが、漁網がリサイクル素材に生まれ変わる簡単な流れを説明してくれました。質の良いリサイクルをするためには、加工する前の段階で異物がない、ナイロン100%の状態にするのがとても大事だそう。
(左は漁網をケミカルリサイクルしたもので、右がマテリアルリサイクルしたもの。ケミカルリサイクルされたものは、脱色され繊維などに生まれ変わり、マテリアルリサイクルされたものは現在主にフリスビーやサーフィンのフィンなどの成型品に加工されるそう)
ナイロンのリサイクルには大きく分けて、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルがあること。さらにその多くの漁網を回収し、リサイクルしていくためには出口戦略がとても重要なこと。知らなかったことばかりですが、実際にお話しを聞き「知る」ことで、ぼんやりと全体像が見えてきました。
ボランティアワークを開始
この日体験させていただいたのは、廃漁網のカッティング作業。網を引っ張りながら、ナイフを使って袋に入る大きさに細かくカットしていく作業です。機械でオートメーションに行うのではなく、ひとつひとつすべて手作業でやっていることにまず驚きました。
網はとても重いので、数人で地面に広げ、手分けしながらやっていきますがそれでもかなりの重労働です。
(漁網を引っ張りながらナイフの刃を入れると、プチプチっと音をたてて切れていきます)
網の補修や継ぎ目などはナイロン以外の素材が使われることもあるため、カットしながら目を確かめ、全て取り除いていきます。とても手間のかかる作業ですが、質の良いリサイクルをするための大事な工程だと関さんはいいます。
カットが終わった漁網は洗浄、乾燥のあと粉砕という工程を経てパートナー企業に送られ、漁網100%ポストコンシューマーリサイクルナイロンへと生まれ変わります。
(こちらは断裁、洗浄、乾燥が終わった状態の漁網。一つの袋に200~300kg入っているそう。奥の部屋にびっしりと積まれていました。作業場には数年かけて集められた漁網が袋に入れられ、所狭しと置かれていました。
私たちが作業したのはほんの僅かな時間ですが〈Ellange(エランゲ)株式会社)〉は関さんはじめ僅か数人でここまでの漁網を地道に集め、毎日作業を行っているそうです。
リサイクル、そして循環の "始まり"
こういった幾つもの工程を経て、ネットプラスはできあがります。今回のボランティアワークを企画してくれた〈patagonia(パタゴニア)〉日本支社 ホールセール部門の太田さんはこう話します。
「使い古された漁網が廃棄されてしまうのは、使用後の解決策が不足していることにも一因があります。ネットプラスはチリやアルゼンチン、ペルーなど南米の50以上の漁業協同体から廃漁網を集めていましたが、これから〈Ellange(エランゲ)株式会社〉の取り組みにより、日本の漁港から出た廃漁網で作られることもあると思います。それを使いパタゴニアの製品が作られ、日本の人々の手に渡ることになれば嬉しいですね。海の生態系を守る活動は〈patagonia(パタゴニア)〉環境アクションのベース。そういう意味でも〈Ellange(エランゲ)株式会社〉さんと共に継続して取り組みを続けていければと思います。
ボランティアワークを通じて感じた「ポジティブなこと」や「This Feels Good」なことは?
今回の体験を通じ、知識だけでなく経験としてリサイクルの始まりを肌で感じることができました。普段なかなか接する機会がない漁師さんや素材メーカーさん、そして私たちのようなディーラー、販売店といった「点」と「点」が一つの線で繋がったことで、より当事者意識が高まったと共に、普段私たちが販売している商品への想いもより強くなりました。
オッシュマンズでは、環境への負荷が少ないエコフレンドリーな商品を積極的に取り扱いながら、古着の回収や街の清掃活動など、オッシュマンズらしい形で様々な取り組みを行ってきました。今後も、今回の経験で得た知識や経験を広く社会へとフィードバックしていきながら、継続して取り組んでいきたいと思います。
編集後記
今回で二回目となる "My Routine 番外編" はいかがでしたか。
番外編の第一弾として公開したリペアセンター訪問時に、 〈patagonia(パタゴニア)〉 で働く方々は "We're in business to save our home planet.(私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む)" という同社が発信するメッセージをスタッフ一人ひとりが強く心に刻み、当事者意識を持ってあらゆる問題に対して向き合い、そして行動している、という印象を受けましたが、今回はそんな〈patagonia(パタゴニア)〉と共に取り組みを行う企業〈Ellange(エランゲ)株式会社〉にも同じような印象を受けました。
〈Ellange(エランゲ)株式会社〉の社名の由来は、アラスカ州ユピック族の言葉で、"覚醒すること・その記憶が永遠に残る最初の体験をすること"という意味だそうです。今までの常識を覆し、新たな価値観を創出することで関わる人を覚醒させたいという想いを込めています。その〈Ellagne(株式会社)〉のミッションは「私たちは、誰もが海を想う社会を作る」。
"質(Quality)"、"誠実さ(Integrity)"、"環境主義(Environmentalism)"、"公正さ(Justice)"、"従来のやり方にとらわれない(Not Bound by Convention)" をコアバリューに掲げる〈patagonia(パタゴニア)〉と〈Ellange(エランゲ)株式会社〉、またそこに賛同し集まった方々は、出会うべくして出会った関係なのだと思いました。
今回ご紹介したオッシュマンズに関係のある企業やそこで働く人の中にも 「魅力」 と 「個性」、「エネルギー」 に溢れる方々がまだまだ沢山いらっしゃいます。
今後もこの “My Routine” を通して、私たちオッシュマンズスタッフをはじめ、オッシュマンズと関わりのある企業やそこで働く人々の “This Feels Good” な瞬間もご紹介していきたいと思います。
次回も乞うご期待。